#019 資格試験合格への正攻法


プロ野球の故野村克也監督が生前に引用した江戸時代の某藩主の名言に「勝ちに不思議の勝ち有り、負けに不思議の負けなし」というものがあります。

この意味は「勝負に負ける時には必然的な理由があり不思議はないが、勝つ時には偶然が味方をしてくれたような不思議な勝ち方もある」というもので、四択型中心の資格試験の合否にも当てはまります。

すなわち、解けない問題、時間切れになってしまった問題の答えを最後の5分で適当に選んでも、確率論的には1/4、幸運ならば半分以上が正解となりそれが「不思議の合格」に導いてくれるという場合がある一方、鉛筆を転がし選んだ選択肢がほとんど当たらずに不合格になることは「不思議の負けなし」に該当するからです。

このことを踏まえて、100点満点で合格ラインが約70点、合計50問で配点が各問2点というありがちな資格試験に合格するための「不思議の勝ちを合理的に期待した受験対策」を考えてみたいと思います。

それは「30問は確実に正解、残り20問は4択を2択まで絞り込める実力をつけて、30 + 20 x 1/2 = 40問正解 = 80点を狙いある程度の余裕をもっての合格を目指す」という方法であり、実はこれが時間対効果上、最も正攻法ではないかというものです。

確実に正解できる問題数を30問ではなく、40問以上にまで引き上げて本番試験に臨むことが理想に見えるかもしれませんが、それを目指すといわゆる難問・奇問対策が多く必要となり膨大な学習時間がかかります。

一方でそのような問題を実はほとんどの受験生が正解できませんので、合格する秘訣とは基本問題を落とさないことなのです。

評判の良いテキストと問題集を1冊ずつ購入し、得点源となる半数程度の「ベタな問題」を確実に正解できるようにして、応用問題に関しては確実に不正解と思われる選択肢を排除して2択にまで持ち込むことができれば、合格できる可能性がかなり高まります。

具体的に提案する勉強法は以下の通りです。

① まずテキストを無理に覚えようとはせず、一度通読して頭の中に出題範囲のイメージ全体マップを焼き付ける。

② その上で問題集を解き始めるが、その際には常に「全体マップ」のどこに位置するものが問われているのかを意識する。

③ 最初に問題を解いた結果のほとんどが不正解でも、関連するテキスト部分に戻り、適時マーカーで強調したり手書きメモを加えていくと同時に、「基本問題とそれ以外をザクっと見分ける感覚」を磨いて行く。

④ 一問一答アプリ等がある資格試験であれば、試験前1ヶ月位にはランダム出題モードにして、1日15分でも常に全分野に刺激を与えるようにする。

⑤ 直前には本番と同じスタイルの模試や過去問で時間配分等の検討をして受験テクニックも身につける。

多くの資格試験では暗記した量で勝負が決まりますが、一度覚えたことでもドンドン忘れるのは当たり前です。

基本問題を中心に、漆(うるし)の上塗りのように何度も解きながら、それが全体像の中でどこに位置しているのかかを意識してズームインとズームアウトを繰り返す習慣をつけると、記憶が定着しやすくなります。

「暗記よりも理解が大事」という見解もありますが、「よく理解できた=根深く暗記できた」と言い換えることができ、暗記と理解は対立点ではありません。

全体像を見極めて4択を2択までに絞り込める実力は、的外れの論点に惑わされずに真の問題点に絞り込む能力が身につくことなので資格取得後の実務にも役に立ちます。

また2択にまでに絞り込めれば、それは「想定内」なので、試験中の焦りもなく淡々と対応していけます。

あまり時間をかけずに資格試験合格を目指したい方にとっては、難問・奇問の沼に時間とお金をかけて迷い込んで行くのではなく、「計算づくの不思議の勝ち」を目指す勉強方法が正攻法として検討に値します。

追記:

効率的に業務に関連する資格を取得する為、私は以前この方法で各試験に臨みました。

結果、それまで金融・保険・個人税務・不動産業界とはまったく縁のない仕事でしたが、CFPⓇ(Certified Financial Planner)6課目の一括受験を含めて、FP1級実技、宅地建物取引士(本試験と登録実務講習修了試験)、プライベートバンカー資格3分野、MOS(Word, Excel, PowerPoint)と、1年半弱の間に集中的に15の試験を受けて15連勝することができました。

満点に近い合格など1つもありませんでしたが、各試験にて「期待値通り」平均80点程度の得点となりました。

実務での必要時には、身につけたコアとなる知識を使いネットで調べること等も可能となりますので、難問・奇問を極めるために試験勉強の時間を増やす必要はないのです。

2023年01月12日