#031 話すレベルで書くことへの違和感(アウトプットを考える)


同じアウトプットでも「話す」と「書く」とでは意識すべき点が異なると考えます。

程度問題はありますが「話す時には瞬発力」が「書く時には正確さ」が優先されるということです。

「書く」アウトプットでは本人の納得が行くまでの構成検討や文章推敲が可能な一方で、「話す」アウトプットでは事前準備が可能な講演等を除いて、その余裕はありません。

この違いについて、FP資格取得者が実務にてアウトプットをする場面を見てみます。

事前に質問内容が知らされていない相談会等と、セミナー講師としてプレゼン資料を作成する際のアウトプット方法に関する優先順位を取り上げます。

無論、瞬発力優先の会話形式の相談会などでも、回答内容そのもののピントがずれているのであればそれは問題外です。

そのような根本的なミスがなく、瞬発力をして全体論として正しい方向性を示すことができるのであれば、話すアウトプットとしては及第点に達しています。

細部への完璧に近い正確性を求めた結果、何も喋れなくなることより遥かに立派であるということです。

詳細な関連情報に関しては後日調べた上で、別途回答すればよいのです。

一方でセミナー用資料作成等に織り込まれる情報に関しては緻密かつ正確であることがそのアウトプットとしての大原則となります。

書く内容に関して少しでも自信がもてないことが出てくるのであれば、一次資料にまで遡及して正確さを優先させる姿勢が求められます。(尚、実際の講演の際にどこまで細部に渡っての話をするかはまた別の問題です。)

次にこの瞬発力と正確さの優先バランスをノンネイティブとしての英語アウトプットのケースで見てみます。

例として「私たちは幾つかの情報について議論してきた」という日本語を英訳する場面を想定してみます。

この英訳を会話の中で日本語の直訳に近く瞬発的に「We discussed about some informations.」と言ってしまうことは、ノンネイティブである限り(相手にもその意味は伝わりますし)、正確な英語が出てこないことを理由に沈黙するより遥かに有効です。

一方、書く英語では「We have discussed some pieces of information.」と「時制においては現在完了形を使い、discussに関しては他動詞なので前置詞を入れずに目的語を取らせ、informationは不可算名詞なのでpieces ofを前に置き複数的表現にする」という正確性がないと、その英文内容の信憑性にまで疑問を持たれかねません。

しかし現実には瞬発力が要求される「話す英語」だから許されるようなノンネイティブ的な基本的間違いを、高等教育を受けてきた人ですら、正確さが必要な「書く英語」にも垂れ流してしまっている英作文をよく見かけます。

英語を書くことに関しては中学高校で学んだ程度の文法知識があれば、細部に自信が持てない時でも参考書や辞書等を利用することにより、かなり正確な文章を書くことができるにもかかわらずです。

これではいつまでも英語力は向上しません。

昭和の漫画吹き出しにでてくるような「アタシ、ガイコクジンアルヨ、二ホンゴムズカシイネー」的英語は、話すアウトプットでの旅行会話レベル程度にまで抑えておかないとモッタイナイと感じます。


追記:


本題からは逸れますが、英語の話をしましたので私自身が実践してきた「ノンネイティブとして話す英語のコツ」を2つ程共有致します。

(1)正しいカタカナで発音する。

「カタカナ読みの英語は通じない」と言われますが、正しくカタカナ表記すれば日本人として十分に通じるカタカナ英語は実はたくさんあります。

money : マネーではありません。マニーと言えば通じます。

Yokohama Stadium : スタジアムでもスタディアムでもありません。ステーディアムです。マツダスタジアムでも同じです(笑)

Liquid:リキッドではなくリクイドと発音して下さい。通じます。金融用語でよく使われるLiquidityはリクイディティですよね。

(2) 発音できない単語は発音できる単語と組み合わせて補完する。

例えば、日本でも最近人気のデュワーズ(Dewars)というスコッチウイスキーがありますが、アメリカのバーなどでノンネイティブである日本人がこれを注文してもまず理解してもらえません。

スペルアウトして伝える方法もありますが、あまり格好よくありません。

そこで「May I have a Scotch, Dewars?」と、Scotch(スコッチ)という日本人発音でも通用する単語を同格的に持ってきてから具体的ブランド名を続けて、聞く相手の想像範囲を狭めて伝わるようにしました。

ノンネイティブの話す英語アウトプットはちょっとした工夫で伝わり方が劇的に改善する場合もあるというオマケ話でした。

2023年07月17日